――私、あなたといられるだけで幸せです……
「ん……」
トランは軽く身じろぎをして、目をこすりながら上半身を起こした。
何だかよくわからないけれど、幸せな夢を見ていた気がする。
そのお蔭なのか、身体も頭もだるさはなく、スッキリしたようだ。
しかし、自分はもう目覚めているというのに、スースーと寝息のようなものが聞こえる。 ふと見ると、ソファにもたれて眠るフローラがいた。
(どうしてこんなところで寝ているんだ…?)
いや、そもそもなぜ彼女がこの部屋にいるのか自体もトランには謎だった。
邪魔をしたくはないと言い、トランの仕事中に彼女がこの部屋に来たことは一度もなかった。
先程女官が言っていたように、心配になって見に来たのだろうか――
フローラはこちらまで嬉しくなるような笑顔を浮かべて眠っている。
トランは彼女を起こさないようにソファから降りると、そっと抱きかかえソファへと降ろした。
ずっと姿勢が楽になったせいか、さっきよりも幸せそうに眠っている。
トランはフローラの流れるような髪を軽く梳き、そっと口付けた。
そしてゆっくりと立ちあがると、再び仕事の山へと向かい、ペンを取った。
―――微かに笑みを浮かべて。
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「あら?陛下、もうお目覚めになられたのですか?掛けるものを持って参りましたのに。」
「ああ、それが……」
そう言うと、トランはとある方向へと目線を向ける。
それを追うように女官が目線を移すと、ソファの上で眠る一人の女性がいた。
「まぁ…!」
そこにはグランバニア王妃が、幸せな夢でも見ているのか、嬉しそうな笑みを浮かべて眠っていた。
「…これでは眠れませんね……」
「だろ?」
トランは苦笑しながら、ペンを動かす。
「別の場所でお休みになられますか?すぐにでもご用意できますが…」
「いや、いい。もう疲れは取れたから」
―――愛する妻のお蔭で。
〜FIN〜
投稿者(管理人:葉月るい)のコメント
こっぱずかしい絵を描いてしまったこと、「幸せ」という単語を連呼しまくったこと…悔いは多々ありますが、久々の主フロSSで結構楽しかった思い出があります。
こんなでも、好きと言ってくださった方がいて、それも嬉しかったです。またSS書きたいですね。
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